マグシールドを分解してみて分かった事・感じた事【ダイワの防水機構】

リール
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今やダイワの標準的な防水機構として採用されているマグシールド。

前回の記事で17セオリーを分解してみて、それまでは全然無頓着であった防水機構について思ったことを書いてみます。

 

【実際にマグシールドを分解してみた際の記事】

ダイワのマグシールド機を分解してみる【ゴリ感の発生と原因】
今回は禁断のマグシールド機であるダイワリール(17セオリー)を分解してみた話です...

マグシールドとは

リールは構造上、ボディ内の駆動部(ギヤ)で作った回転によってローターを回転させます。

ローターへ回転を伝えるためには、回転軸をボディ外部へ出す必要がありますが、そこには必ず隙間(クリアランス)ができます。

 

つまりスピニングリールの構造上、ピニオンギヤの上部のボディには回転部を外部に出すための隙間が必ずあることから、この隙間からの海水の侵入を防ぐ構造を作ることが防水上の課題となっています。

 

シマノは、この回転軸部の隙間に撥水加工を施したXプロテクトと呼ばれる機構を採用しています。

 

これに対して、ダイワは、磁性流体と呼ばれる磁石にくっつくオイルを充填させて海水の侵入を防止させる「マグシールド」と呼ばれる機構を採用しており、これは、ボディから外へ延びる回転軸のクリアランスに磁性流体による油膜を貼って(マグオイルを充填させて)、駆動部への海水の侵入を防ぐ機構です。

 

マグシールドは現在、駆動部としてピンオンギヤの上部の他に、ハイエンドクラスのリールにはラインローラーのやハンドル軸のベアリングにもマグシールドが搭載されています。

 

マグシールドの機構(ダイワHPより)

 

実際のマグシールド

前回の分解ので確認したマグシールド部です。

クラッチリングの外側にできた隙間にマグオイルが充填されています。

※写真ではマグオイルは除去済みです。

 

 

ここの防水機構には、単純な防水機能の他に、摩擦によって巻き心地を悪化させないことも求められます。

マグシールドは、回転部やボディ内部への異物の流入を防ぎ、かつ粘性の低いオイルであることによって回転の抵抗もあまり発生しないと思われますので、理論上はとても良いものだと思います。

 

このリールに磁性流体を応用した技術を開発したダイワのエンジニアの方々の発想は、私もエンジニアの端くれとしてとても素晴らしいと感じます。

 

※ラインローラーなどのベアリング部のマグシールドは賛否両論あるようですし、使用したこともないので、この評価はローター下部の機構だけです。

 

分解して分かったボディ内部への海水の侵入経路

マグシールドは素晴らしい防水機構だと思いますが、リールを分解してみて分かったことは、海水の侵入経路はマグシールドが施されているローター下(ピニオンギヤ上)だけではないということです。

 

すなわち、誤ってリールを水没させてしまった場合、ボディ内部に海水が侵入する可能性の最も高い場所は、ボディとボディカバーの隙間です。

 

 

ここには、何も防水機構が付いていません(グリスくらい?)。

 

これではせっかくマグシールドがローター下からの浸水を防いでも、水圧がかかった場合、確実にこちらから海水が侵入します。

 

ソルティガ等はこの隙間にゴムパッキンが付いており、海水の侵入を防いでいるらしいですが、他の汎用リールには残念ながら付いていないようです。

コスト的な問題で採用することは難しいのでしょうか。

 

ここを解決しないと、せっかくのマグシールドも問題解決になっていないような気がします。

 

マグシールドの恩恵

マグシールドの恩恵は、ローター下部の防水機構のみに留まらないようです。

マグシールドによるローター下部の防水性が向上したことによって、ローターの肉抜き、すなわち軽量ローター(エアローター)が採用できることになり、回転レスポンスや感度の向上に繋がっているようです。

ダイワHPより抜粋

 

「マグシールド」あっての「エアローター」

リールボディに水を侵入させない「マグシールド」の登場で、ローターは防水機能の役目を解かれ、その形状を変えることが許されたのだ。

「マグシールド」という新発想による防水機能があって、「カプセルボディ」という技術があって、ついに「エアローター」という進化にまで発展していったのだ。いわゆるテクノロジーの相乗効果である。ちなみに軽量な「エアローター」の登場は、回転レスポンスの向上と釣り感度を高める効果に繋がっている。

 

マグシールドを最大限に活かせる構造はモノコックボディ?

ダイワの汎用リールの防水性の弱点はボディとボディカバーの隙間であると述べましたが、この問題を解決してくれそうな構造がモノコックボディです。

 

ダイワHPより

 

モノコックボディは、ボディにギヤを埋め込む構造で、従来のボディカバーでなく、ねじ込み式のギヤカバーを採用しています。

ギヤカバーにゴムパッキンを採用することは容易でしょうから、モノコックボディは剛性アップやギヤの大型化の他に、防水性にも寄与した構造であると言えます。

 

従来はセルテートのHDモデルやソルティガなどの大型リールのみに採用されていましたが、18イグジストで初めて小型汎用リールにも採用されることになり、今後は他の廉価モデルにも採用されることが期待されます。

 

まとめ

マグシールドは、発想も機能も非常良い防水機構だと思いますし、その恩恵としてローターの軽量化にも寄与しています。

 

しかし、マグシールドが施されて防水されいるのは主にローター下の回転部のクリアランスのみです。

したがって、不注意によってリールを海水に浸水させてしまった場合、マグシールドとは異なる場所、すなわち、ボディとボディカバーの隙間からの浸水は避けられません。

したがって、ここを解決しなければマグシールドの意味が半減してしまいます。

 

ここを我々ユーザーは理解して使う必要がありますし、水没させて別の場所から浸水したにも関わらず、その要因をマグシールドの脆弱性に求めるのはお門違いです(マグシールドを全面的にアピールしているメーカーも過大広告だとは思いますが)。

 

18イグジストにも採用されたモノコックボディは防水性も高い構造に見えますので、今後他のリールにも採用される事を期待しています。

 

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